アメリカ在住プロダクトマネージャーのブログ

アメリカの大学院を卒業後、そのままアメリカに残り、現在は某米国企業でプロダクトマネージャーとして働く男子のつぶやき。

アメリカで現地就職する方法

留学した多くの人に訪れるであろう、"このまま現地で就職できないだろうか"、という思いですが、行動に移さずに日本に帰ることが多いと思います。私の経験を元に、アメリカで留学後に現地留学する方法を纏めてみたいと思います。重要度としては以下の通りです。

 

1. ビザの取りやすさ

2. 学位やスキルの需要対比での希少性

3. 学校のランキング(top 10, top 20といった大まかな)

4. 英語でのコミュニケーション能力

 

1. ビザの取りやすさ

2020年1月現在、これは一言で言えば、STEM OPTが使えるか否か、につきます。(以下、グリーンカードや米国国籍を持っていない前提です。これらをもっていると難易度はぐぐっと下がります)

 

アメリカに留学する場合、F-1ビザという学生ビザを取得します。このビザは就労許可がついていないため、アメリカで就職するためには就労可能なビザ、殆どの場合H1-bビザに切り替える必要があります。そして、このビザを申請するには雇用先にビザスポンサーになってもらう(アメリカ人ではなく当該外国人を何故雇うのか、そしてきちんと標準並の給料を払えるのか、などを移民局に説明する)必要があります。アメリカの好景気を受け、H1-bはなんと現在抽選制になっていて、年にたった一回の抽選に通る可能性は、学士の場合は30%+程度、修士だと55%程度と言われています。正直、かなり可能性は低いです。そうなのです、せっかくスポンサーしてくれる企業を探しても、抽選に外れるとアメリカでは働けません。従って、現在のアメリカにおいて外国人をH1-bを念頭に採用するのは非常にリスクが高くなっています。

 

ここで重要になってくるのがOPTです。これは一年以上の留学プログラムについてくる特典のようなもので、F-1ビザのステータスのまま、アメリカで働くことができるシステムです。実務修習といった位置づけなので、履修したコースと勤務先のポジションが一致している必要がありますが、とても魅力的な制度です。そして、STEM (Science Technology Engineering Math)と認定されたコースを履修したOPTの場合、なんと最長で3年も働けます。通常のOPTだと1年なので、これ自体でも大きな差がありますが、H1-bの抽選を考慮するとこの差は絶大です。なぜならSTEM OPTの場合は3回抽選に参加できるため、抽選に通る確率が大きく上がるからです。具体的には;

学士: 1 - (1-0.3)^3=65.7%
修士: 1 - (1-0.55)^3=90.9%
といった具合に抽選に通る可能性が大きく上がります。勿論、自分の勉強したいものを専攻にすべきではありますが、アメリカ就職をするにあたってはこのSTEM OPTが使えるか否か、というのは雇用側にとってとても大きな意味を持ちます。

 

2. 学位やスキルの需要対比での希少性
これはある意味当たり前なのですが、日本の就活のように職種やスキル別の採用をしないシステムに慣れていると面喰らう可能性があるので手短に説明します。

 

アメリカの採用は職種別です。日本のように総合職というざくっとしたくくりで採用されることはありません。Product Manager、Softwre Engineerなどという職種に応募して、それぞれの職種に対する要求水準を満たしているか、を元に採用の意思決定がなされます。従って、採用のためのJob Descriptionも極めて詳細で、Degree in CS from top ranked schools、といったものがQualificationに書いてあります。逆に言うと、このQualificationに書いてある学位やスキルがないと箸にも棒にもかかりません。

 

そういった中で、ビザをスポンサーする必要のないアメリカ人と戦うには、需給のバランスがタイト(需要 > 供給)な業界を狙うのがセオリーです。さらに言うと、この需給のバランスは地域毎によって違います。少し強引な例を出すと、シリコンバレーで引く手数多なソフトウェアエンジニアも、農地ばかりのアメリカ中西部の閑散とした地域では職を見つけにくい、といった感じです。留学する先のスクールが位置するエリアで主要な業界や、需要の強いポジションを調査しておく方が良いでしょう。

 

3. 学校のランキング(top 10, top 20といった大まかな)

アメリカではマネージャーが採用も担当します。学生の採用も同様で、実際のインタビューは我々のような非人事の人間が担当します。日々の業務に加えて採用活動もするため、どうしても学歴での足切りが起こりがちです。

 

従って、できればある程度有名な学校にいきましょう。アメリカの場合、学校のランキングは専攻によりけりで、面接官も自分のインタビューしている分野のランキングしか分からないケースが多い(例えばソフトウェアエンジニアの面接官はコンピュータサイエンスのランキングくらいしか知らない、乃至はコンピュータサイエンスのランキングのイメージで全て判断する)ので、自分の目指す職種のランキングを調べて出願戦略を練るのがよいと思います。

 

大体の感覚として、上位20に入るくらいの学校であればトップスクールと言えると思います。その中でも勿論差はありますが、それが採用における重要なファクターか(例えばコーディングテストの大失敗を挽回できるか)と言われると、若干疑問符がつきます。個人的な経験を元にした感想ですが、学歴はやはり足切りの要素が強いのかな、と思います。

 

情報のソースとしては、US Newsのランキングが一般的かなと思います。自分の分野をみるに、少なくとも大きく外している感じはないです。

 

4. 英語でのコミュニケーション能力

これはアメリカで働く以上は当たり前ですね。きちんと英語で意思疎通ができ、自分の意見を表明できることが必要です。特に大きい企業では多くの部署と協力しながら働いていくため、例えばコーディングだけできればいい、みたいな採用はされません(もしかしたら一部の大天才は採用するかもしれませんが)。

 

職歴が長くなっていくとどうしてもメンタリングやマネジメントという側面が出てくるので、場面に合わせた英語の言葉の選び方や言い回しなどもきちんと頭にいれておかないと厳しいですね。

 

以上です。兎にも角にもビザのハードルが限りなく高いので、そこをどう突破するのか、というのを中心に戦略をたてるのがよいかなと思います。