アメリカ在住プロダクトマネージャーのブログ

アメリカの大学院を卒業後、そのままアメリカに残り、現在は某米国企業でプロダクトマネージャーとして働く男子のつぶやき。

プロダクトマネージャーとは何をする仕事か

日本ではあまりメジャーではないプロダクトマネージャーですが、こちらアメリカではかなり人気の職業です。では、実際にどんなことをする仕事なのでしょうか。そしてどんな人がプロダクトマネージャーとして成功するのでしょうか。

 

そもそもプロダクトマネージャーは何故必要なのか

これはプロダクトのリリースサイクルが極端に短くなっていることが根本的な理由だと思います。リーンスタートアップに詳しいように、現代のプロダクト開発はMVP(Minimum Viable Product)を開発したら、あとはマーケットに出し、プロダクトを引っ込めるか否かという決断も含めて、顧客からの生のフィードバックを元に、プロダクトを逐次的に開発していきます。従って、顧客の要求を元に、月に一回程度新しいフィーチャーをリリースするなんてこともあり得ます。

 

こういった開発形態においては、最終的な意思決定者を一人おくことはとても理にかなっています。エンジニア、マーケター、ファイナンスなどの意見がぶつかって物事が前に進まない、所謂、船頭多くして船山に登る、という状態を避けるためです。そして、その意思決定者こそがプロダクトマネージャーなのです。

 

プロダクトマネージャーの仕事は優先順位を決めて周囲を巻き込むこと

意思決定がプロダクトマネージャーの主な仕事なのだとしたら、実際には何を決めるのでしょうか。私の意見ではプロダクト開発の優先順位だと思っています。

 

例えば、とあるソフトウェアをリリースした後、顧客から、データのバックアップ機能とアプリを通じたモバイルからのリモートアクセス機能の二つの要求が多数来たとしましょう。限られた社内のリソースの中で、これら二つのどちらを優先しなければならないのか。これこそがプロダクトマネージャーが毎日直面し、頭を悩ませている問題です。

 

アプローチとしては色々な方法がありますが、アメリカにおいては殆どの意思決定がデータに基づいてなされています。カスタマーインタビューやビッグデータを使った統計的な手法などを元に、競合する機能のどちらにエンジニアのリソースを振り分けるか、というのを決めていきます。

 

そしてプロダクトマネージャーの仕事はここでは終わりません。自分の中で決めた優先順位を周りに伝え、納得してもらう必要があります。プロダクトマネージャーはプロダクトの最終意思決定者である一方、エンジニアやマーケティング、デザインなどの部門は、プロダクトマネージャーにレポートしていないことが多々あります。従って、こういった関係者に納得感をもって仕事をしてもらうためにも、自分の優先順位をきちんと伝えて、データに裏付けされた説得力のあるストーリーを作る必要があります。

 

プロダクトマネージャーは長期的な視野を持つ必要がある

これは優先順位を決める中の一つの要因ですが、大事なので別建てにします。優先順位を決める大前提として、プロダクトマネージャーは、自分のプロダクトに対して長期的な視野を持っている必要があります。

 

例えば、先程の例で、データのバックアップは即座にマネタイズできる一方、アプリ開発はフリーの拡張機能だったとしましょう。短期的にはデータのバックアップを優先し、キャッシュフローを生んだ方が良さそうです。しかし、現代のモバイルシフトを見ていくと、アプリからモバイルアクセスができないのはマーケットシェアをとりにいく観点からは致命的かもしれません。もしかしたら2年後や3年後に大きく実を結ぶのは、アプリ開発なのかもしれません。

 

プロダクトマネージャーに必要な資質

よいプロダクトマネージャーになるには、well roundedである必要があるとよく言われます。日本語でよくいうジェネラリスト、というのに近いと思います。意思決定者として様々な局面に顔を突っ込むため、プロダクトのことだけではなく、デザイン、マーケティング、ファイナンス、はたまた会計や財務、法務などにも幅広く通じている必要があります。また、優先順位づけはデータによってなされるため、定量的な思考能力の高さと、データを自分でとってきて加工する能力も求められます。最後に、関係者を巻き込むために、高いコミュニケーション能力が求められます。

 

こういったスキルを効率よく身につけるには、MBAが最も近道でしょう。人気の職業なので狭き門にはなりがちですが、こういったスキルを幅広く身につけるにはMBAはもってこいの場所だと思います。GAFAなど人気企業のMBA採用に通るには、こういった基本的なスキルに加え、他人に負けない何か(例えばエンジニア出身でテクニカルな議論を深いレベルでできる)を一つ持っておくことが必要かなと思います。